第51回技術士全国大会
技術士資格の広報 New
技術士試験合格者祝賀会
熊本地震復興支援会議
2017九州北部豪雨災害への対応
行事一覧
会員専用

技術相談をされる方へ


<目次>

1.  はじめに

2.  技術士とはどのような人か

3.  コンタクト(無料相談) 

4.  研究推進における無償支援の限界

5.  おすすめの方法

6.  具体的な相談内容


1.  はじめに

技術士の窓からアクセスして、これらの原稿をお読みになる方は、技術士に何かをお願いしたいが何がどのような形で頼めるのかよくわからないという方がおられると思います。技術士の技術部門は、医学を除く21の専門分野があり、建設・土木や環境をはじめ、ものづくりや航空・宇宙や繊維、農業など様々な相談をお伺いできるのですが、本稿では、判り易くするためものづくりに例として、ご相談の流れを紹介いたします。


2.技術士とはどのような人か

 技術士は国家資格で、弁護士や会計士と同じ士業です。


 技術士法によると、専門的応用能力を必要とする計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行います。技術士になるには最低7年の業務経験が必須で、専門能力、応用能力、及び課題解決能力を備えている。技術士に頼む理由がわかりにくいし、どのくらい頼りになるのかも疑問に思われるでしょう。筆者はものづくり分野で産業支援をしている関係から、具体的な事例を紹介することで、技術相談の範囲についてご理解をいただくとともに、「いったいどのくらいの費用が掛かるのだろうか?」とか「本当に抱えている技術的課題を解決してもらえるのだろうか?」といった不安を減らして行ければと思います。


3.コンタクト(無料相談)

 技術士への相談の目的は技術的課題の解決です。その入り口はホームページの技術相談です。初回相談でお答えできるものも多いですが、しっかりした支援を要する課題の場合は技術士がじっくり相談内容を聴いて、どういった事ができるかを検討しご提案する場合もあります。


ご相談の前提として、日本技術士会は公益社団法人であり、相談を受けた当事者が日本技術士会として相談者から仕事を受注することや、技術者を業務派遣し、その契約の仲介をするという事はできません。当会の技術相談はそれゆえ無償の奉仕です。


本技術相談としてできることでは、対応者(技術士)が個人または他の組織の立場で経験豊富な技術士や機関・大学等と連携してアドバイスをし、更に深い無償支援が可能な公的機関等を紹介するという事が考えられます。


技術士の中には公共の中小企業(技術)支援機関に所属している、あるいは、そのコーディネータを経験したものがおり、これら機関にお繋ぎできる場合があります。そういった機関では、大学や公設試等、各種研究機関ともつながりがあり、専門家として技術士はもちろん、研究者、弁理士、弁護士、中小企業診断士を擁しており、いろいろな側面で課題を考え、研究戦略、技術経営的な相談、知財関連も含め、広い視野で総合的に問題を発見することにつながる可能性があります。


このような支援機関は、国や地方自治体等・公共団体等の公的な資金を使うので、ほとんどの場合相談者が中小企業であれば、長期支援対象であると判断されれば、「無償」で大学や研究機関、他の士業などの専門家のアドバイスが受けられます。


4.研究推進における無償支援の限界

 無償の研究開発推進や事業化支援は、各機関から専門家に支払われる謝金や交通費が公金であり、無償の範囲で行っている限り実務、実働をするのではなくアドバイスのみとなります。実務実働は、支援の中で知り合う事になった、専門家や機関、企業と個別契約をすることになります。例えば大学の場合は学術指導や共同研究契約となりますが、これが無償という事はありません。特定の技術で実務(例えば設計、実験、検証、指導等)を専門家に望む場合は、業務委託や顧問の有償契約という事になります。


これらの費用は各機関、各専門家によってまちまちです。


5.おすすめの方法

 技術開発は、自社の技術者が自力でやってこそ意味があり、技術が身に付き、事業の発展に資するものとなります。まずは当会の技術士のアドバイスを受け、更に上記無償のサービスを利用して、数か月から数年アドバイスを受けながら自力でどこまでできるか挑戦することが最も良い方法と考えます。資金的な面では、GoTech※を代表とする競争的資金を獲得も支援メニューに入っており自らの努力も必要ですが独自に挑戦するよりは敷居が低くなります。


どうしてもアウトソーシングやコラボが必要という事になれば、ご自身がこれらの支援の中で課題周辺の理解を深め、どのような機関や専門家がいるのかを知ったうえで、個別に契約を進めていけば良い結果が得られると考えられます。


6.具体的な相談内容

 ものづくり関係であれば、生産性向上、品質管理・向上、DX, 生産システム、製品安全、信頼性設計、研究開発における知財の扱い方、共同研究のアライアンス、知財戦略をもとに展開する開発など相談をおうけした実績があります。


分野としては、製造業は最多ですが、IoTや情報システムに絡んだもの、建設、農業、水産業、電気・電子、機械、金属医療、化学、環境、経営工学、福祉関係の技術、伝統工芸の応用技術など様々な相談がございます。

 

補足ですが、技術士は公的な機関で裁判や事故調査などに参画することもありますが、あくまでも公的機関から委任された技術士が別の資格や身分を与えられて実施するものですので、当会の技術相談の対象として技術士の資格で事故調査や裁判に関わることはありません。



【執筆者】

西尾 行生

技術士(機械部門)

博士(工学)

(日本技術士会九州本部ものづくり部会部会長)

(日本技術士会九州本部/福岡)



【専門事項】

研究開発の支援

大学を卒業後、富士通、パナソニックで情報処理機器の研究開発に従事して定年退職

機構設計、電気機器の材料開発、電気化学、製造および生産システム関連、品質管理、情報工学、環境対策など広く業務を担当し、ものづくりの最上流から下流まで実践的な経験を積んできた。


2019年以降、九州工業大学職員として3年間勤務し国際研究推進の業務を担い、研究分野における競争的資金の支援や知財・安全保障等の技術法規にも専門的な知識がある。現在はこれらの経験を活かし、九州オープンイノベーションセンターで多様な中小企業からの研究相談に対応している。そのほか司法に係る業務も実施している。(技術士の他、労働安全コンサルタント、環境計量士(振動・騒音)の資格を所持)


長崎大学工学部機械工学科卒業

九州工業大学大学院生命体工学院博士課程修了






※本記事のご利用にあたって

本記事の内容は執筆者個人の見解に基づくものであり、日本技術士会の公式見解ではありません。また、記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。ご利用者様自身の判断と責任において、ご活用頂くようお願いいたします。