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北九州ものづくり産業の技術史報告(技術士による社会貢献活動紹介)

“皆様の地域に貢献してきた、
ものづくり産業分野の技術史記録を残しませんか?”


<目次>

1. はじめに

2. 技術士による、北九州市の“産業技術史調査研究事例”の紹介

3. むすび




1.  はじめに

読者の皆様の中で、お住いの都市、市、町村役場の事業企画・広報担当者や経済産業・文芸史などの担当者で、地域の産業の発展に大きく貢献してきた企業群の、多様な技術について歴史として記録を残してみたいとお考えがありましたら、ご参考にしてください。また地域の在住の、技術士の社会貢献活動の一つの事例としてご紹介します。


ここでは北九州市の発展に貢献してきた、地域産業のうち、特に金属加工産業の“産業技術史調査研究事例”について述べることにします。この調査研究には、日本技術会に属している北九州市在住の技術士の皆様にご協力をいただきました。



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2. 北九州市の“産業技術史調査研究事例”の紹介

 北九州市在住の技術士などによる技術調査研究グループの地域社会貢献活動として、北九州産業技術保存継承センター(以下KIGS)の多くの調査研究事業を支援してきました。

 

 最近、金属加工技術 “溶接、表面処理、鋳造、鍛造”に関する技術調査研究事業4件を受託し、企業訪問・執筆・公開報告会などの活動等を行ってきました。事業4件全体の活動期間は2013年4月~2017年10月です。

2.1 いきさつ

 北九州市の北九州産業技術保存継承センター(以下KIGS)では、“ものづくりのまち北九州市”として、地域の産業技術に関する調査研究事業を推進し、その成果の保存継承を行ってきました。

 日本技術士会九州本部北九州地区支部では、KIGSの諸活動に協力して、技術的専門性を生かした、社会貢献活動として、技術調査研究活動に協力してきました。

 2015年には「明治日本の産業革命遺産」4施設が世界文化遺産としてユネスコに登録され、内3施設(製鉄・製鋼・石炭産業)が、この北部九州の地にあります。このように金属加工産業発展の歴史が北九州にはあります。


 今回筆者がリーダーとなり、有志技術士の協力を得て行った調査研究活動


     (①北九州における溶接技術の歴史と発展、

        ②北九州における表面処理技術の歴史と発展、

        ③北九州における鋳造技術の歴史と発展、 

        ④北九州における鍛造技術の歴史と発展、

        ⑤産業技術革新史年表の更新に関する調査研究) の5件の内、①~④の4件について紹介します。

                                                                    

 なお、各技術調査研究の活動終了後は、その都度、すべて一般公開で報告会が行われ、 報告書は国立国会図書館はじめ北九州市内の図書館、福岡県工業技術センター、その他公的機関、市内の工業高校・大学、近郊都市の図書館等に広く配布されています。

2.2 ねらいと基本方針

 (1) 主なねらい

 “ものづくりのまち北九州市”における企業の金属加工技術(溶接、表面処理、鋳造、鍛造)の歴史と発展の調査研究を通じて、以下のことを明らかにすることにしました。

① 北九州における金属加工企業の技術進歩と地域社会・経済への貢献

② 日本及び海外市場向け金属加工製品及び各種機械装置等の競争力向上

③ 金属加工技術の継承と指導及び技術者・技能者等の人材育成と伝承


  (2) 対象企業選定の基本方針

① 独自の金属加工技術面から北九州の経済や産業の発展に顕著な貢献をしてき

た企業

② 北九州地域内で、金属加工技術を活用し、現在も存在し、活躍している企業(調査時点)

2.3 推進プロセス

2.3.1 準備

 それぞれのプロジェクト毎にKIGSと筆者との委託契約を、更に筆者と調査研究担当技術士との再委託契約を締結しました。 また推進会議はKIGS内で行ってきました。


2.3.2  計画と実績の進捗管理及び編集構成

 金属加工技術4件の調査研究活動(溶接、表面処理、鋳造、鍛造)毎に下記項目の“計画と実績表”を作製して進捗管理を行いました。


(1)  全体計画設定、

(2)  編集委員会開催(原則月1回)、

(3)  企業への協力依頼及び当該企業訪問(聞き取り訪問調査)、

(4)  全体編集・執筆分担の設定・調整、

(5)  原稿執筆作成・各種データの保管・査読・編集、

(6)  納入完了


 報告書編集の基本構成は、第1章概要、第2章調査企業の歴史と発展、第3章調査企業の特徴的な金属加工技術と製品例、第4章支援機関と人材育成、第5章まとめ、添付資料、年表としました。


2.3.3 各技術調査研究活動の概要

1) 北九州における溶接技術の歴史と発展

(1) 調査研究活動

① 期間:2013(H25)年4月~2014(H26)年1月

② 企業10社1機関の溶接技術及び技能者の育成などについて、主としてアーク溶接、ガス溶接という観点から調査研究を行いました。報告書のページ数は116ページである。 報告書の表紙を図1に、表1に担当者、企業名等を示します。


(2)  北九州の溶接技術の特長と貢献

① 溶接技術導入による製鉄設備近代化の実現

② アーク溶接技術を基盤とした応用技術の開発による企業の競争力向上

③ 溶接自動化の面では、溶接ロボットや自動溶接装置の開発と量産化の実現


(3)今後の課題

① 高エネルギー型溶接機の導入・活用による高精度・高精密製品の溶接技術開発と知財化

② 溶接工程のシステム化・自動化・ロボット化による生産性向上

③ 宇宙・海洋などの新分野に対応した溶接技術の開発促進

④ 溶接技術者・技能者の人材確保と育成・訓練及び技能伝承


 開発した独自の溶接技術を基盤に、企業を創業し、競争力向上を果たした企業は、常に新技術開発を進めています。また若手技術者や技能者への技術訓練・伝承も重視しています。

図 1 報告書の表紙


2) 北九州における表面処理技術の歴史と発展

(1) 調査研究活動

① 期間:2014(H26)年4月~2015(H27)年1月

② 企業数7社1機関の表面処理技術及び人材育成等の調査研究を行いました。報告書のページ数は105ページです。図2に示します。

 表2に担当者、企業名等を示す通りです。  


(2) 北九州の表面処理技術の特長と貢献

① 創業時からめっきや溶射など表面処理技術を戦略として、表面処理技術の導入及び開発を推進し、競争力向上を図ってきました。

② 水洗用金具部品のめっきで事業を成功させ、プラスチック表面の金属めっき技術の高度化を実現した企業、自動車用パワー半導体のめっき技術の開発に成功した企業もあります。

③ 北九州には、日本屈指の溶射技術パイオニアとしての溶射技術の導入・開発の推進をして、強い競争力      を有する企業群があります。

④ 表面処理技術支援機関として福岡県工業技術センター機械電子研究所は、表面処理技術の開発支援及び評価試験、人材育成などを推進。 

図 2 報告書の表紙


(3) 今後の課題

 北九州における表面処理技術に関しては

① 顧客に喜ばれる表面処理製品を提供し、事業の競争力強化のために、新しい表面処理技術の開発と知的財産化の推進

② 高エネルギー溶射技術など先進的表面処理技術の開発

③ 表面処理技術者・技能者の人材確保と育成・訓練及び技能伝承の促進

④ 金属やプラスチック表面のめっきや溶射技術の発展があります。特に溶射技術のレベルは日本屈指です。今後は人材育成と知財化を進める共に、表面処理技術の高度化や高性能化をすることにより、環境改善への貢献が期待されます。


3) 北九州における鋳造技術の歴史と発展

(1) 調査研究活動

① 期間:2015(H27)年4月~2016(H28)年1月

② 企業7社1機関1大学について、鋳造技術という観点から調査研究を行いました。報告書のページ数は130ページです。図3に示します。

表3に担当者、企業名等を示します。


(2) 北九州の鋳造技術の特長と貢献

① 日本最初の高炉溶銑直注の鋼塊用鋳型の鋳造技術、世界初の転炉溶鋼による大型鋳鋼品製造技術。

② 日本の各地で行われていた“鋳掛け法”を応用し、耐摩耗性能遠心鋳造を飛躍的に高める為に、切削用の高速度工具鋼を熱延ロールに適用したハイスロールの開発。


 まず鋼製シャフトの外周に、少量ずつ鋳掛けて成形するCPC(Continuous Pouring process for Cladding)法が開発され、並行して従来の遠心鋳造法での適用拡大開発が進みました。


③ 原子力発電用など高温高圧バルブの製造技術

④ 純銅の精密鋳造品製造で世界に進出

⑤ 自動車排気用の高品質薄肉耐熱鋳鋼品の製造

⑥ ロストワックス法による精密鋳造品の製造

⑦ 地元の九州工業大学による先端鋳造技術の基礎研究及び福岡県工業技術センター機械電子研究所による技術支援・人材育成活動


(3)今後の課題

今後はCAD,CAE, CAM,3DPrintingなどの技術を駆使して、新製品・新技術開発を進めていくことが期待されています。

図 3 報告書の表紙

4)北九州における鍛造技術の歴史と発展

(1) 調査研究活動

① 期間:2016(H28)年9月~2017(H29)年10月

② 企業4社について、鍛造技術という観点から調査研究を行いました。


報告書のページ数は85ページである。図4に示します。

表4に担当者、企業名等を示します。


(2) 北九州の鍛造技術の特長と貢献

現在では設備も高性能化し、以下のように高付加価値化を志向した技術に特化し

ています。

① 鉄鋼・造船・発電用の大型高級鍛鋼品製造

② 自動車部品及び住宅関連水洗金具等の非鉄金属材料の鍛造品製造

③ 各種機械部品、製鉄部品、船舶部品、車輪等の鍛造品製造

④ ローリングミル技術によるリング形状のステンレス製高級精密鍛造品の製造 

図 4 報告書の表紙

図 3 報告書の表紙

(3) 今後の課題

 鍛造企業経営者は“鍛造事業への熱い思い”という、創業者の情熱を代々継承しています。今後はコンピュータによる塑性変形解析、熱変形解析などFEM、CAEソフトの活用によるニアネットシエイプ、ネットシエイプ鍛造技術の開発、自動化の普及などが考えられます。


3.むすび

 以上、北九州市の“北九州市産業技術史調査研究事例”の紹介をしてきましたが、

担当の技術士の皆様は、数回にわたり、対象企業を訪問して、情報をいただき、協議を重ねて、執筆した原稿は、当該企業の了解のもとに、編集し、印刷したものです。


 本件は、地域に在住している技術士が、その専門的知見をもとに、調査したもので永久に残る貴重な文献となりました。

改めてご協力いただきました企業及び執筆担当者に感謝申し上げます。


 これらの冊子は、国立国会図書館はじめ、福岡県工業技術センター、北九州市内の大学や図書館などに寄贈されています。


 読者の皆様が在住している地域で活躍している企業群の、優れた技術を歴史的観点から検討し、その記録を後世に残すことは重要な社会貢献活動といえましょう。


 ご参考になれば望外の喜びとなります。



【執筆者】

ミヤタハイメック品質技術研究所 宮田 守次

技術士(金属部門) (日本技術士会九州本部/北九州)

  他の主な資格: CMC(ICMC国際認定マネジメントコンサルティング)


【著者紹介】

1.栃木県生まれ

2.1959年 茨城大学工学部卒、八幡製鉄所(株)(現日本製鉄㈱)入社

3.1987年 同社退職、同年 (有)ミヤタハイメック設立、代表取締役

       (宮田技術士事務所併設)(技術・経営のコンサルタント業)

4. 2001年 宮田ハイメック品質技術研究所の改称、現在に至る

5 コンサル活動実績

   1)国内コンサル:250社以上

   2)海外コンサル・調査活動24カ国

6. 表彰

  1997年 フィリピン工業省金属産業研究開発センター所長賞

  1999年 九州経済産業局長賞(工業標準化功労賞)

  2007年 日本技術士会会長賞(功労賞)

7. 2015年 英国の国際科学雑誌「Material Research Letter」に 九州大学、アリゾナ大学等との共同論文「強誘電体セラミックスの強加工」採用・掲載


※本記事のご利用にあたって

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