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建築職の技術士試験体験記


<目次>

1. はじめに

2. 受験動機

3. 経験論文1

4. 経験論文2 

5. おわりに




1.  はじめに

一昨年、還暦を迎え定年となりました。現在、会社の再雇用制度を利用しシニア社員となり、建築見積を主業務として働いています。私は39年前に土木職としてゼネコンに入社しました。最初は、土木の設計・現場を5年間ほど経験しました。その後、建築職となり、構造設計、現場を経て、見積となりました。建築になっても技術士という資格に憧れがあり、建築経験の内容で技術士試験に臨みました。しかし当時は、私の周りの技術士は土木職が多く、建築的な内容の参考書もほとんどありませんでした。私の経験論文が建築内容で試験に臨まれる方の参考になれば幸いです。だいぶ古いものになりますが、試験を受ける際の受験動機と私が技術的体験論文で実際に提出したものを掲載します。専門とする事項は「建設部門」の「施工計画および積算」です。


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2. 受験動機

① お客さんからの信頼を得るため。

 建築は民間の仕事が多く見積担当として、計画段階でお客さんに会う機会が多い。見積の仕事は建物の金額を算出することです。お客さんに算出根拠を説明し、理解を得て信頼してもらうためにも必要な資格であると考えた。


自己の資質を高めるため。

 技術士を取得するために、基礎から勉強し直すことになり、自己研鑽が図れる。また、このように他の技術士の方たちとも知り合いになれる機会が増え、自分の幅が広がると考えた。


③ 技術士という資格に憧れ

 私の周りには土木職の技術士が多くいたが建築職の技術士は皆無であった。建築としての誇りと家の中で頑張っている姿を子供にみせたい思いがあった。



3. 経験論文1

業務1:冷凍倉庫の最適基礎形式の施工計画(平成〇年〇月~平成〇年〇月)

【業務概要】工事名:□□冷凍倉庫新築工事 建設地:△県▲市

本業務は、海上の埋立地に、冷凍温度-30℃倉庫(RC造5F延床面積40,000㎡)の施工案件であった。原設計(図1-1)の基礎形式では、コスト・工期が厳しく、さらに冷凍庫下の凍害や杭の品質が問題となった。そこで、杭と基礎を図1-2の構造に変更することで、原設計に比べ、基礎躯体数量が減少し、トータルコストの5%縮減と、杭の変更による0.5ケ月の工期短縮ができた。さらに、冷凍庫下の凍害発生防止と杭の品質も確保できた。

図1-1 原設計構造図

図1-2 変更後構造図



4. 経験論文2

業務2:張弦梁構造による膜屋根の設計・施工計画(平成〇年〇月~平成〇年〇月)

【業務概要】工事名:□□研究棟新築工事 建設地:△県▲市

本業務は、内部に大空間を有する研究施設の設計・施工案件であった。建物の膜屋根部は図2-1に示すようにアーチ型の張弦梁を3本短辺方向に架け渡し、その上に膜(ガラス繊維布)を張った張弦梁膜構造となっていた。膜と張弦梁の組み合わせは、国内外初の構造形式であったため、事前に実験や解析により、設計・施工方法を検証した。

図2-1 膜屋根概略図(mm)

 以下、業務2について詳述する。

(1)私の立場と役割

 特殊構造建築物の技術主任として、建物全般の設計及び施工に伴う技術指導を行った。


(2)業務を進める上での課題及び問題点

課題1:膜屋根形状を確定するため、詳細立体寸法を算出する必要があった。

問題点:①膜の張力 ②押えケーブルの張力 ③膜のサグ値(図2-1参照)などの設定方法。

課題2:張弦梁は、面外方向に弱いため、地組み後、屋根面で組み合わす必要があった。

問題点:張弦梁自体の剛性が小さいため、施工段階での変形量の把握及び製作形状の設定。


(3)私が行った技術的提案

(3)-1最適膜屋根形状の決定

解析方法を検証するために、試験体を作成し、風荷重を想定した膜の内圧実験と積雪を想定した載荷重実験を行った。その結果、試験体での実験値と解析値は一致したため、実施での最適膜屋根形状決定に反映させ、表2-1の結果を得た。


表2-1 膜屋根の各種張力及び寸法


(3)-2張弦梁製作形状の決定

縮尺模型を実施工と同じ手順で作成し、応力と変位を測定し、張弦梁の製作方法を検証した。解析は、完成形状から製作形状までの応力と変形の履歴を逆算し、線形解析を用いて算定した。その結果、測定値と解析値は一致し、実施工ではこの解析方法を採用した。この解析による実施工段階での張弦梁解析値(目標管理値L,a,b)と実測値を表2-2に示す。


表2-2 実施工段階での張弦梁寸法

(4)技術的成果

事例のない構造形式の設計・施工案件であったが、実験データと解析方法を実構造物の設計に反映させ、(社)日本膜構造協会の技術評定を取得し、建築確認申請の許可を得た。また施工方法も施工計画に反映させ、合理的な形状の膜屋根を無事竣工することができた。


(5)現時点での技術的評価及び今後の展望

 膜と張弦梁を非接合とした結果、細かいディテールが省略でき、工期短縮とコスト削減が図れた。また、膜と張弦梁の組み合わせた自重は、0.15kN/㎡(折板屋根の1/4)と軽量であるため、今後の超大空間建築物に寄与できる。                     


以上が技術的体験論文で私が実際に提出したものです。このようにして、「経験論文」は、建築の視点から解答し合格出来ました。以下に実際の膜屋根写真を掲載します。 

図3 膜屋根の外観



5. おわりに

 実際の試験では、施工場所や工事名称は具体的に記載しました。この経験論文は当時、会社の了承を得て、参考例として本に掲載された事を覚えています。また、私が試験を受けたのは、19年前の2007年で、姉歯事件などで建築構造に対する社会の不信感が強い時期でした。口頭試験の際に最初に試験官に言われたのは「私たちは建築の事を知らないので教えてください。」でした。この言葉を聞いて技術士の方たちはなんて謙虚な人たちだろうと思いました。しかし話しているうちに建築構造の事を十分に熟知している方だとわかりました。機会があれば当時の口頭試験時の再現を記載したいと思います。最後に、私が合格できたのは土木・建築を問わず会社の人の協力があったからです。また、社内外の講習会や研修に参加することによって、刺激を受け試験に対して奮い立ったことを思い出します。この時の想いを忘れずに今後のシニア社員生活を送っていきたいです。



【執筆者】

五洋建設株式会社

横大路 桂吾

技術士(建設・総合技術監理部門)

(日本技術士会九州本部/福岡)




【専門事項】

建築見積


【資格等】

一級建築士、 一級建築施工管理技士、 一級土木施工管理技士、 コンクリ-ト技士、建築コスト管理士、 建築積算士、 甲種火薬類取扱保安責任者、 小型船舶二級 



※本記事のご利用にあたって

本記事の内容は執筆者個人の見解に基づくものであり、日本技術士会の公式見解ではありません。また、記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。ご利用者様自身の判断と責任において、ご活用頂くようお願いいたします。